「ないものはない」と言えた日

想像してください——

借金が重なり、希望の光さえ見えなくなった夜。
真夜中の屋上から、下を見下ろし、「明日が来なければいい」と本気で思ったあの日。

支払日の前夜、ただ静かに過ぎる時間。
絶望は音もなく、心を締めつける。

「なんで、俺が…」

怒り、悔しさ、恥。
毎日が後悔の連続だった。


銀行口座の残高はゼロ。

それでも「もしかしたら…」と、ATMにカードを入れる。
入ってるわけない。だけど、どこかに奇跡を期待してしまう。

隣のATMで、おばあちゃんが札束を入金している。
100万円はあるだろうか?

ふと頭をよぎる——
奪って逃げようか?

でも、そんな勇気もない。
それ以前に、それができる人間でもない。


銀行を出て、空を見上げた。

雲一つない快晴だった。

「……よし、開き直ろう。」

金はすぐには作れない。
だったら、正直に言おう。


そして、あの日。カード会社から電話が鳴った。

「いないって言ってくれ」と、妻に手を振った。

しかし、妻はこう言った。

「逃げてもしゃーないやん。ないものはないって言うたらええやん」

心が、一瞬止まった。


受話器を手に、僕は言った。

「他にも借金があって、今すぐには払えません」

すると、担当者はこう聞いてきた。

「では、いくらなら支払えますか?」

「……3000円なら」

「わかりました。では、毎月月末に3000円をお願いします」

——え?それでいいの?

正直、驚いた。


逃げると追いかけてくる。

でも、向き合えば“道”は拓ける。

小さな一歩。
でも、それが「再生のスタート」だった。


僕が伝えたいのは、こういうこと。

どん底からでも、希望はある。
開き直って、“今の自分”で正直に生きること。
それが、一番強い武器になる。

借金で悩んでいる人へ——
人生は、3000円からでも変えられる。

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